〈星の航路〉 Phantasmal Overture vol.5
読み:ほしのこうろ
初演:2003年 大阪工業大学文化会マンドリン部(委嘱)
フルート加筆版初演:2009年 和歌山大学マンドリンクラブ(加筆委嘱)
編成:1stマンドリン/2ndマンドリン/マンドラ/マンドチェロ/ギター/コントラバス
※フルート加筆譜あり
演奏時間:約14分
【曲目解説】
本作品の作曲開始の契機は、とある病気で私が入院していたさなかに頂いた委嘱依頼でした。五線譜もパソコンもない状態であったため、まずタイトルを決め、入院中は頭の中でモチーフを考えていました。退院後、大量に着想したモチーフ群を五線譜に落としていくという、これまでとは違った過程で作曲を行ったため、現実の音にするとイメージと異なっているなどして、完成までかなり苦労したことを覚えています。
本作品が描いているのは、大航海時代に、星の位置を頼りに新大陸を求めて出航した船員たちの航海の情景です。自由のない入院中に、病院の屋上から見上げた星空が、そうしたシーンを思い浮かばせたのでしょう。
曲構成は、主題Ⅰ提示(緩)→主題Ⅱ提示(急)→主題Ⅰ変奏(緩)→主題Ⅱ変奏(急)→主題Ⅰ再現(緩)となっております。主題Ⅰでは希望溢れる船出と道標となる星の瞬きを、主題Ⅱでは航海中に遭遇する荒れ狂う波や嵐とそれに立ち向かう船員たちの姿を描いています。委嘱元より「1部ステージの最終曲を予定しており、2部と3部を控えているため、あまり盛り上過ぎないようにしたい」というご要望があったため、終局部は静かに星の輝きの表現を残す形としました。また、比較的長めのギターソロがあるのも、他作品にはない特徴となっております。
本作品は、演奏技術面ではシリーズ内で最も取り組みやすい部類に入ると思います。難易度の高い曲を並べた演奏会の中で、「華やかさがあって、でも練習時間をあまり割かないですむ曲が欲しい」といった場合に適した作品ではないでしょうか。