〈汽笛の丘~鳴り継ぐ想い~〉 Phantasmal Overture vol.6
読み:きてきのおか なりつぐおもい
初演:2005年 神戸大学マンドリンクラブ(委嘱)
編成:1stマンドリン/2ndマンドリン/マンドラ/マンドチェロ/ギター/コントラバス
演奏時間:約17分
【曲目解説】
本作品は、「神戸の街」「阪神淡路大震災復興10年」をテーマに委嘱を頂いて作曲したものです。幼年期に神戸在住経験のある私は、神戸は港から汽笛が聞こえる街として記憶しており、また大震災のあった1月17日に、毎年停泊船が一斉に追悼の汽笛を鳴らすことから、本作品のメインテーマを汽笛の音に置きました。本作品では、全体を通じて様々な場面で、低音部に汽笛の音を表現する2度の重音が登場します。
曲構成は、主題Ⅰ提示(緩)→主題Ⅱ提示(急)→主題Ⅲ提示(緩)→主題Ⅱ再現(急)→主題Ⅰ変奏(緩)となっております。主題Ⅰは、私の記憶にある「汽笛の街・神戸」へのノスタルジアを表現しています。また、後の主題Ⅲに繋がる裏主題として、D-G-E(G-C-A)という3つの音で構成するフレーズを予め登場させています。主題Ⅱでは、震災の瞬間の光景と人々が震災後の逆境に立ち向かっていく姿を描いています。主題Ⅲでは、前半部で裏主題として使っていた3音のフレーズをモチーフにして、人の繋がり・愛情・助け合う優しさを美しくせつないメロディで奏でます。なお、委嘱元のご要望で、各パート首席奏者によるソリ部があります。
本作品は、シリーズ内で演奏時間が最長の作品となっております。演奏技術面では、取り組みやすい作品に属しますが、現実に起こった悲劇をテーマとしていることもあり、表現面の精度向上に取り組んで頂きたい作品です。