〈風の隊商〉 Phantasmal Overture vol.3

読み:かぜのたいしょう
 
初演:2001年 プロムジカマンドリンアンサンブル(委嘱)
編成:1stマンドリン/2ndマンドリン/マンドラ/マンドチェロ/1stギター/2ndギター/コントラバス
演奏時間:約15分
 
【曲目解説】

 本作品の第一稿完成は、1999年です。とある学生団体より委嘱を受けて書き下ろしたものの、諸事情により初演が中止となっていました。その後、2年の時を経て、パーカッション加筆及び一部楽曲訂正して2001年に委嘱初演となりました。 
 シルクロードあるいは西部劇の舞台のような荒野を行く旅商人が本作品のモチーフとなっております。曲構成は、主題Ⅰ提示(緩)→主題Ⅱ提示(緩)→主題Ⅲ+Ⅱ変奏(急)→主題Ⅰ再現(緩)→主題Ⅲ変奏(急)となっています。冒頭部・再現部では情景描写に主眼を置いており、荒野を吹きぬける風(高音域のマンドリンのトレモロ)と、その風の中を蜃気楼のように現れるキャラバン(ギターによる主題提示)は、その最たる例と言えるでしょう。主題Ⅰは、F#→C#→B(H)→Eの4音で作られており、主旋律・対旋律・ベースラインを問わず幾度も登場します。主題Ⅱ及び主題Ⅲでは、情景から人に主役が移り、仲間内の葛藤や自然と人間との戦いを表現しています。 
 本作品は、Phantasmal Overtureシリーズの中でも、表現面での難易度が高めかと思います。オーケストラの完成度を高めていくことに楽しみを見出せる、成熟した団体向けの作品と言えるのではないでしょうか。