〈枯木の祈り~遠い空へ~〉 Phantasmal Overture vol.4

読み:かれきのいのり とおいそらへ

 

初演:2000年 広島工業大学マンドリン部(委嘱)

改訂初演:2013年 マンドリンサークルDiverte(フルート加筆委嘱)
編成:1stマンドリン/2ndマンドリン/マンドラ/マンドチェロ/ギター/コントラバス/フルート
演奏時間:約14分


【曲目解説】

 本曲は、初めて「委嘱」という形で依頼を頂いた作品です。当時、作曲に大変苦戦しましたが、親交のある作曲家の方からインスピレーションを頂き、そこから半月程度の期間で一息に完成させました。そうした経緯から、本作品には私個人として非常に愛着があります。

 着想となったのは、雪原にたたずむ一本の枯木です。凍てつく寒さに耐えながら、春の訪れをひたすら祈り続ける枯木をあざ笑うように、現実は吹雪が吹きすさぶ様を描いています。
 曲構成は、主題Ⅰ提示(急)→主題Ⅱ提示(緩)→主題Ⅰ再現(急)→主題Ⅱ変奏(緩)と単純な作りとなっています。主題Ⅰは荒れ狂う吹雪とそれに耐え続ける枯木の姿を、主題Ⅱでは春の予感と現実の悲哀との対比を表現しました。

 2013年にフルート加筆の依頼を頂き、その際に原曲で偏りのあったオーケストレーションの見直しを行いました。現在は、フルート入りの改訂譜を、正式版として採用しております。
 本作品は、Phantasmal Overtureシリーズの中では、演奏技術面では最も難易度が高い作品の一つです。インテンポで弾くことがかなり難しく、中間部で♭系の調も出てきます。その分、テクニックに自信のある団体には歯ごたえのある作品に仕上がっていると思います。