〈かえるのあした〉

 

初演:2020年 宮崎夏フェスティバル(献呈)
編成:1stマンドリン/2ndマンドリン/マンドラ/マンドチェロ/ギター/コントラバス
演奏時間:約3分


【曲目解説】

 本作品は、2020年8月に開催された宮崎夏フェスティバルのために2週間程度の短期間で作曲し、献呈させていただきました。当初、大人数が集合して演奏会形式で行われる予定だったフェスティバルがコロナ禍のため開催困難となり、急遽四人の作曲者が「かえるのうた」のメロディをモチーフに新曲を書きおろし、少人数のアンサンブルで録音・配信するイベントに変更されました。当日は私も奏者の一人として録音に参加し、オンラインでの初演という新しい経験ができました。

 誰もが知るメロディのほか、輪唱という「かえるのうた」の特性を残しつつ、コード進行を大幅にいじることで、曲の雰囲気を原曲から大きく変えました。描こうとしたのは、しとしと降り続く雨の中で、明日を思いながらゲロゲロ泣く一匹のアマガエルの姿です。冒頭から続くギター・マンドチェロの下降音形の三連符によって冷たい長雨を、オールピッキングのマンドリン属のメロディによって主人公であるアマガエルの孤独を印象づけます。三連符が途切れるところでは、上昇音形のメロディを使い、晴れあがって虹が出るシーンをイメージさせ、「明日はきっといい日になる」という希望を持てるような作品に仕上げました。

 昨今の情勢から音楽活動に大きな制約が続く日々ですが、必ずまた合奏や演奏会ができる日々が戻ってくる、という思いを込めて作曲させていただきました。フェスが終わってからも、早くそれが現実となることを祈ってやみません。